『アメリカ』に出てくるバルコニーの青年

フランツ・カフカの『アメリカ』(『失踪者』)で、深夜2時にバルコニーで勉強をしている青年がどういうわけか昔から気になっている。ストローブ=ユイレの『アメリカ(階級関係)』を見てからか。青年は学生で昼はデパートの販売員をし、夜に勉強をしているという。青年はいう。「ほかにしようがない。いろんなことをやってみたが、これがいちばんだ。数年前は昼も夜も学生だけ、そのかわり餓死しかけた。古ぼけた汚ない巣穴で寝起きしていた。あまり身なりがひどいので教室へ出るのに気がひけた。昔のことだ」。また次のようにもいう。「・・・学問か、勤め口かときかれたら、むろん勤め口を選ぶとも。この選択が正しいのを実証するために勉強しているようなものなんだ」。