正義

ジョン・ロールズは「公正としての正義」で「正義」について次のようにいっている。「正義は、通常の意味においては、社会的諸制度のもつ多くの徳性のうちのただ一つのものを表しているにすぎないと理解されるべきである。というのは、社会的諸制度は、不正義でなくとも、時代遅れであったり、効率がよくなかったり、品位がなかったり、その他諸々のことであったりすることがあるからである。正義は、善き社会についての包括的な理想像と混同されてはならない。正義は、何らかのこのような理想像の考え方の一部分にしかすぎないのである」。また「正義とは、諸々の競合する利害や対立する要求が存在すると仮定され、そして、人々がお互いに自分の権利を主張しあうと想定されている場合の、実践の徳性なのである」。よって、「一つの目的」のために、「私利を捨てて力をあわせて働」くような「聖者達の共同生活」があるとすれば、「正義をめぐる争いなどはほとんど生じそうもない」という。