バンリユー

ポール・ヴィリリオ速度と政治 (平凡社ライブラリー)

エンゲルスは「絶望した大衆は、パンと労働を、さもなくば死を、と要求した」と書いているが、実際には、当時「労働者大隊」と呼ばれ、強制的に地方へ追放されるか軍に入るかしなければならなかった者たちの合言葉は、「我々はとどまる!」だったのだ。我々は停止する!

バルザックは書いている。「パリの悪徳のすべて、不幸のすべてが巣食う、中性的な空間、どんなジャンルにも入らない空間」。これが郊外(ban-lieue 都市城壁の外にあって領主の布告が及ぶ場所)の起こりであり、そこは領主権の及ぶ範囲でありながら、なおかつ線的かつ時間的に距離を置いた場所にほかならない。すなわち、商品、食糧、家畜といった社会的物資はそこに保管され、物資の流れがそこで切断されるのである。家畜といえば、「手足を繋がれた」プロレタリアートは何千年来、それと同一視されてきた。彼等は、員数として扱われて戦争や荷物運びに使われるようになった多少とも野性的な動物、と見なされてきた。