羽仁五郎「清算明治維新史研究」

(1928年10月『新興科学の旗のもとに』)
内田義彦・大塚久雄・松島栄一編『現代日本思想体系20 マルキシズム1』

服部氏また野呂氏がいわゆる「わが封建制度の内在的矛盾の激化」といわゆる急襲する「欧米資本主義の波濤」とを、必然の連絡なきものの結びつきのごとく結びつけ、偶然論に陥り、かくしてかの「外国刺戟なくば徳川封建時代の最後の運命はなお遠き将来にあり」とし、「未だ大風なしに倒壊する程度にまで腐敗し切っていたわけではなかった」とする超歴史的史観と、軌を一にするのは、何の必要と何の理由とによるか。(・・・)「内在的矛盾」を論ずるマルクス主義講座同人諸君が、「矛盾」の積極的意義および弁証法的運動を理解せずして、明治維新史研究の中心点にひとつの大なる抜穴を存せしめているのは、われわれのさらに最も遺憾とするところである。