奴隷の水準

民度」という聞き慣れない言葉をよく耳にするようになった。てっきり差別的なメンタリィティーを持った者たちが作った造語だと無知ゆえに思い込んでいたが、辞書を引くと「人民の生活や文化の程度」という意味で、例文には「民度が高い」とある*1
どういう過程でこの言葉が形成されたのかはよく判らないが、そもそも「民」という言葉は「象形。ひとみのない目を針で刺すさまを描いたもので、目を針で突いて目を見えなくした奴隷をあらわす。のち、目の見えない人のように物のわからない多くの人々、支配下におかれる人々の意となる」から来ている*2
民度を英訳するとthe standard of livingとかthe cultural level of the peopleとかになるのだろうか。しかし、「生活水準」とか「文化水準」といった意味になり、「支配下におかれる人々の水準」というニュアンスからは遠く離れている。そのようなthe standard of livingが高く、衣食が足りている欧米諸国でも大規模なデモが起きているのはどういうことか。やはり、デモも禄に起こらないこの国の「民度が高い」というのは正しいのかもしれない。

*1:広辞苑』、第五版、岩波書店

*2:『漢字源』、学研