資本主義社会とは

実質的にはいわゆる搾取階級と被搾取階級という、あらゆる階級社会に共通な階級的対立の上に存立するのであるが、形式的には商品形態をもってこの実質的関係を隠蔽するのである。しかもこの形態の関係は、他人の剰余労働を剰余価値として実現しながらこれをさらに利潤、地代、利子の形態で再分配し、利子、地代、労働賃金なる所得形態に転化するのであって、現象的には商品の売買と同様になんらの階級的関係にもよらないものとなる。それは全く自由、平等の契約関係を通して結ばれる社会関係として例えば身分的に固定されるものではない。(・・・)自らの意思によって労働力を商品として販売せざるを得ないという形式を通してあらわれる関係である*1

*1:宇野弘蔵『経済原論』、p521