鈍い眼
限界状況の全体の展望について明晰すぎる眼をもつ者は、おそらく絶望してしまうほかないだろう。限界状況を、日常生活の一側面としてしか、うけつけない鈍い眼の持主だけが、それと闘うことができるのである(略)しかもこの眼の鈍さは、忍耐心によって支えられている鈍さであり、その背後に灼けるように激しい明察をひそめているものである*1
*1:大江健三郎『ヒロシマ・ノート (岩波新書)』、P121ー122
限界状況の全体の展望について明晰すぎる眼をもつ者は、おそらく絶望してしまうほかないだろう。限界状況を、日常生活の一側面としてしか、うけつけない鈍い眼の持主だけが、それと闘うことができるのである(略)しかもこの眼の鈍さは、忍耐心によって支えられている鈍さであり、その背後に灼けるように激しい明察をひそめているものである*1
*1:大江健三郎『ヒロシマ・ノート (岩波新書)』、P121ー122