120年周期の反復

柄谷行人は『at』0号(太田出版)所収の「革命と反復 序説」で、これまでの自説を翻して、1990年以後をコンドラチェフの60年周期ではなく、その倍の120年周期で考えた方がよいという。60年周期で考えると、バブル崩壊から始まる1990年代が昭和恐慌から始まる1930年代に対応するのだが、120年周期の場合、2000年以後の時代は1880年代、すなわち帝国主義が顕著になった時代に対応するという。
1880年代は世界史的には帝国主義段階に対応するが、日本においては明治維新後の国家による重商主義政策=資本の原始的蓄積が漸く終わりに向った段階に対応する。資本が自律的に循環し始めた証拠である最初の産業恐慌を1890年に控え、一瞬の自由主義段階を経て帝国主義を迎えようとしていた時期である。この国において現在を1880年代と類推的にみると、漸く第2の原始的蓄積を終え、一瞬の「新自由主義」を経て柄谷がいうように「新帝国主義」に移行しつつあるということか。そう考えると現在を120年周期で捉えるといった荒唐無稽さもそう無意味ではないのかもしれない。